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Posted by 諭吉セブン
 
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たえさんの思い出 ~その一~
百貨店の包装紙に入った箱が
ある日、我が家に届いた。
差出人を見て私の大好きだった
“たえさん(仮名)”が天国に逝ってから
もう49日が過ぎたことを知る。
今まで何度も老人ホームで
見送った人のことをこのブログにも
書いたことはあるが
たえさんは又、私にとって特別な存在だった。
いつか書こうと思っていたけど
かなりのパワーがいるので
今回はそのたえさんの話の“その一”を
また近いうちに続き“その二”を書く予定です。

介護スタッフの“Sさん”との面談の日は
いつも何を話していいのか悩んだ。
課題のあるスタッフさんだと
どう言えば真意が伝わるのか
どこまで言うのかなど
考えることは沢山ある。
ところがSさんにはこれと言って
課題が見つからない。
Sさんは良く出来た人だった。
大学卒業と同時に
相談業務なども出来る資格も持っていて
パートのヘルパーさんとして働いてもらうのは
申し訳ないくらいで
とにかく頭が良くて気が利き
明るくて前向き。
スタッフも入居者さんも皆、
Sさんが好きだったし
もちろん私も大好きなスタッフさんだった。
それでも面談で褒めちぎってばかりなのも
おだてて働いてもらっているみたいだし
自分の無能さを強調している気もした。

IMGP0480.jpg

ある時、面談で一通り話し終わった頃
Sさんが口を開いた。
「あの、私の肌のことで
何かクレームは来ていませんか?
もしあったら気にせずに
正直に言って下さいね」
私は絶句した後
「何のクレームもきていないから
 安心して働いてね」と伝えた。
そう答えるのが精一杯だった。

Sさんはアレルギーがあって
顔や手が荒れていることがあった。
あまり目立たない時もあったけど
かなり痛そうというか辛そうな日もある。
介護の仕事はとにかく何度も手を洗う。
手を洗うたびに石鹸も使うので
あちこち手の指などから血が出て
いくつも絆創膏が貼ってある時は
手を洗うだけでも痛いだろう。
高齢者さんだけでなく
私達にもいつも優しく気を配っていた彼女が
おまけにそんなことまで気にして
働いていたのかと思うと
胸が締め付けられるように痛かった。

それから数ヶ月経った頃だろうか。
ある日の夕方、Sさんが事務所に飛び込んできた。
ご入居者さんの“たえさん”の話だった。
いつものように食事の前に
ベットに寝ているたえさんを起こしに行くと
こんな会話があったらしい。

たえさん:あんたの肌はほんまにきれいやな~

Sさん: どこがですか?きれいじゃないですよ!!

たえさん:そんなことあらへん。あんたはきれいや。

Sさん: だって、ほら。
     手も顔もボロボロで
     あちこち血が出ているんですよ。

たえさん:大丈夫。あんたはきれいや。
     私がきれいって言ってるんや!
     自分の肌、大事にしいや。
     大切にしいや。

絆創膏があちこち貼られたSさんの手を
たえさんは何度も撫でながら
そう言ったらしい。
そしてとても嬉しかったと
Sさんは語ってくれた。
「あんなこと言われたの初めて!
 自分の肌、大切にしよう。
 そう、大事にしようと思った」と。

IMGP0477.jpg

肌を気にしているであろう人に
わざわざ誰もその話をしなかったし
するのも酷だと思っていた。
でもたえさんは真正面から
言い切ってくれたのだ。
たえさんは認知症で日によってかなり
気持ちに波がある方だった。
ののしるほど口の悪い時もあったけど
ご機嫌な時はスタッフを
笑顔で誉めちぎってくれたりもした。
そうかと思うと本気で
真剣に気持ちを語ってくれることもあった。
ご家族に聞けば昔からとても情の深い
優しい人だったらしい。
自分に接してくれる優しいスタッフを見て
きっとお世辞でなく本気で
「きれい」と思ってくれたのだろう。
そもそもきれいな肌の基準が
決まっているわけでもない。
真っ白でシミ一つない若い肌も
シミやシワがいっぱいの高齢者さんの肌も
それぞれがきれいで
誰かと比べるものでもない。
そう思っていたとしても
私や他のスタッフが同じことを言うと
嫌味にしか聞こえないかも知れない。
それは、たえさんにしか言えない言葉で
たえさんの言葉だからSさんに響いた。

Sさんは私より数年早く職場を去った。
他の福祉や介護の世界も見てみたいと言う気持ちを
誰も止めることが出来なかった。
                                
大人になってから
自分の自信のない部分も丸ごと
全面的に受け止めてくれる人に出逢えたという事は
とても幸せなことだと思う。
私もたえさんに
大きな愛で包んでもらったことを
いつでも思い出せて
その度に温かい気持ちが溢れてくる。

IMGP0475.jpg

たえさんは私やSさんに
自分が優しい言葉を掛けたことも
翌日にはとっくに忘れていた。
たえさんが生きていた日も
そして天国に逝った今もきっと
「そんなこと言うたかいな」と
笑っているに違いない。
私にとってもSさんにとっても
たえさんの言葉は
色あせることなく
これからも心の支えになっている。

*写真と文は全く無関係です。
一月の長谷寺にて  








   
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Posted by 諭吉セブン
comment:6  
[仕事のこと
comment
あぁ。いいお話。
2013/02/10 23:53 | | edit posted by じゅんこ
Re:
じゅんこさん、ありがとうございます。
この話、書くのに少し抵抗を持ちつつも
誰か一人にでも響けばいいなと思って書きました。
私にとってこの人は“佐藤初女さん”でした。
(当時は初女さんを知りませんでしたが)
その話は又、余力のある時に
ゆっくり書こうと思っています。
2013/02/11 00:01 | | edit posted by あゆみ
心に深く深く響きました。

皮膚が荒れてると、毒素が溜まってるとか
ものごとの捉え方、心の持ち方が悪いとか...
色んなことを言われ
それは、もっともなのですが

時には、私の内側を全否定されてしまったような
とても辛い思いに落ち込むことが
過去にたびたびありました。

アドバイスくれる相手の方との関係性にも
よるので、ズバッと指摘してもらえたことで
自分と向き合うきっかけになることもあり
それはそれで、結果的には自分のためになっていいのですが。


たえさんは、きっとSさんの肌そのものをきれいって
言ってくれただけじゃなくて
Sさんの内側の本質の部分
魂なのかなんなのか
Sさんの光の部分をちゃんと見つめてくれて
そこを、きれいって言ってくれたんだろうな
と、私は感じて

そんな、たえさんからの言葉に
私も、なんだか力をもらったような
励まされたような気持ちになったのかなって思います。


なによりも自分自身が、
表に見えている肌だけにとらわれず、
自分の内側の光の部分をしっかり見つめて
大切にしてあげることが
本当に大事なんだなって
昨年の経験から実感していたので

今回のたえさんのお話が、私に深く深く響いたのかもしれません。

あゆみさん、書いてくださって、ありがとう!

2013/02/15 00:40 | | edit posted by きみこ
Re:
きみこさん、コメントありがとうございます。
これを書くのはちょっと勇気がいったので
そんな風に感じてくれて
とても嬉しかったです。
たえさんはお世辞も言うけど
この時本気で言ってくれたことが
私にもSさんにわかっていたので
これは本当に感動しました。
こんな言葉を私も
いつかは言える人に
そして相手に伝えられる人になりたいなと
思っています。

それと今、ふと九州に行きたいなと思って
きみこさん家と行きたい場所との
距離を調べようかとか
勝手に思って
見ていたサイトを閉じたら
コメントが届いていてびっくりでした!
2013/02/15 00:53 | | edit posted by あゆみ
ほとんど同じタイミングだったんですね(^∀^)
あゆみさん、いつでも糸島きてくださいね!
また連絡待ってます~
2013/02/17 22:55 | | edit posted by きみこ
Re:
ありがとうございます。
楽しみにしています。
2013/02/17 23:12 | | edit posted by あゆみ
comment posting














 

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