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Posted by 諭吉セブン
 
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かます
泣いたのは悲しかったのではない。
その手が優しかったから。

「あなたのお母さんは
 何も一人では出来ないんですね。
 これもあれもそれも全部」
そんな風に言われて
嫌な気持ちにならない人はいない。

仕事で介護保険の認定調査に立ち合う。
これは体の機能や生活の様子を聞いて見て調査し
要介護1だの要介護5だのを決めて
それによって介護保険料が変わったり
それによってケアの内容が変わる。
私の働いている老人ホームでは
介護度にそんなに関係なく必要なケアをするので
会社がそれで成り立っているとはいえ
働いている私達にはあまり関係ないと言えば関係ない。
在宅なんかだとこれによって
お家で暮らせるかどうかの境目になるので
何とか介護度を重くみせて
ヘルパーさんにたくさん来てもらったり
ディサービスの回数を増やして
何とかやっている家族も多いだろう。
介護度を決めるのは
その地域の委託された事業所からやってくる
調査員が調査し
主治医の意見書を元に
行政の委員会で決める。
調査員は介護支援専門員、ケアマネさん。
とても優しく素敵な人もいれば
無神経な人もいる。
福祉にかかわるからと言って
皆いい人とは決して限らない。
悪い人ではないのだけど
無神経な人もいる。
入居者さんはその認定調査の時
いつもと変わらない人もいれば
血圧が上がるくらい必死で自分の手足を動かし
元気だと、健康そうですね、と言って欲しい為に
介護度を上げないようにがんばってしまう人もいる。

_IGP6315.jpg

私よりかなり年上のその調査員さんは
悪気はないけど思いやりがなかった。
これも出来ませんね、あれも出来ませんね
全部できませんね。
一つ一つまるで嫌味のように
同席してくれた娘さんを前にして
お母さんの出来ないことをあげていく。
嫌がらせではないのだけど
その調査用紙に書いてあるものを
マニュアル通り読む必要はないはずだ。
ご自分でお食事をすることも
誰かに気持ちを語ることも難しい
重度の要介護5の人だと私は最初に話しているよね?
娘さんの前でそれを
何度も何度も確認する必要性がわからない。
そもそも認知症や他の病気などがあっても
もう数年で百歳を迎えるまで生きておられるのだし
そのお母さんの姿を支えに
息子さんも娘さんも
いろんなことがあっても
「お母さんよりは先に死ねない」と
奮い立って生きようとしているのに。

何とか流れを変えようと
話を変えたり方向性を変えたりするのだけど
その調査員さんには全く通じないまま
どんどん調査は進んでいく。
私が腹が立っているのだし
隣に座る娘さんはきっと
腹も立っているし悲しいだろう。
老人ホームで管理職をやっている立場では
こんな時、声をあらげることも出来ない。
テーブルをひっくり返してやりたくもなり
怒鳴ってやりたい気持ちを必死で抑え
調査は淡々と進んでいった。

「耳は聞こえてますか?」の質問に
私と娘さんは「はい、聞こえてます」と言う。
入居者さんは話せないけど
しっかりとした意思があって
ベットから車椅子に移るのは怖がられるし
吸引のスイッチの音で口をつぐむ。
だからスタッフは皆
話しかけて慎重に声にならない声を
聞き取ろうとしている。
すると調査員さんの声は大きくなり
「そうでしょうか?本当に聞こえていると思うんですか?」
 私はそう思いません。だって耳が聞こえていれば普通、
 目が動いたりするけど目も動きませんでしたよ
 聞こえていませんよ、絶対。」
そう言い続けるので私はいよいよ怒ってしまい
感情を抑えながら冷静に話した。
「私たちは“思い”でご本人と接しています。
 どこまで聞こえておられるかはご本人にしかわからないけど
 声を掛け表情を見て、聞こえていると思って働いています。
 娘さんも同じです。お母さんは自分が娘が来ていると
 わかっていると思って来て下さっているし
 声も届いていると思うから来るたびに
 話し掛けて下さっています。
 そちらは調査のお仕事なので
 冷静に客観的に見られるのは仕方ないことですが
 私達に聞かれずにご自分で判断されて書かれたらどうですか?
 私も娘さんも“思い”でご本人とは接していますから」
娘さんは隣で静かに何度もうなずいてくれた。

そこまで言ってもこの調査員には
何も通じなかったらしくて
「えっ、だって聞こえてないと思いますよ」と続ける。
もうあかんわ、この人。
とりあえず早く帰ってもらえるように
私は淡々と答えて
やっと調査は終わった。

調査員を見送った後
私の中に抑えていた感情が吹き出した。
娘さんはどれだけ傷つき
どれだけ腹が立っていただろう。
それでも私は真横にいながら
この人を守りきれなかった。
それがただ悔しくて
深々と頭を下げて謝った。
すると娘さんは私の背中を撫でながら
「あなたが謝るのはおかしい。
 あの人がおかしいのよ。
 母のことも人でなく物やと思っているから。
 ただ仕事と思ってやっているから
 平気で人を傷つける言葉を言えるんやわ。
 ありがとう、母のことをそんなに思ってくれて
 怒ってくれて悲しんでくれてありがとう。」
そう言って何度も私の背中を
優しい手で撫でてくれた。
私はその手が温かくて
ポロポロと泣いてしまった。

まだまだ溢れてくる悔しさ
そして自分の無力さに
その日はスタッフさんに一日中
ブツブツ聞いてもらいながら過ごした。
娘さんはそれから少し経って
真っ赤な目をしてホームを後にされた。

夕方、スタッフさんからその後
娘さんはお部屋でお母さんに話し掛けて
怒っておられたと聞いた。
そしてひとしきり怒った後に
「お母さん、さっきの調査員の人に
 屁でもかましてやったら良かったな」
とおっしゃっていたらしい!
さすがは大阪の人、すごいな。
げらげらと無邪気に笑えないけど
その発想にちょっと笑えてほっとした。

*お二人の名誉の為に
 娘さんも入居者さんもとても上品な人なので
 怒って屁をかますような人ではありません、念の為。

_IGP6284_20120129225559.jpg

*写真と記事は無関係です。
カラーは痛々しいですが元気になってきた
桃ちゃん(上)諭吉とななちゃん(下)
ご心配かけました。










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Posted by 諭吉セブン
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