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Posted by 諭吉セブン
 
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髭剃り
うちの老人ホームの主みたいな入院中のJさんが(入居者さん)
つい2日前、「今晩がヤマです」と言われてしまい
ご家族からの電話で「夜まで行けないので」と聞き
4時間近く、病院に付き添った。
この人に対して
優しい天使のようなスタッフさんまでも
大声を出してしまうことがあった。
他の人には優しく出来ても
このJさんには本気で
怒ってしまったり、喧嘩したり
スタッフさん、ご入居者さんを問わず
好き嫌いが激しくて
強い人には弱くて、弱い人には強くて
自分より弱い他のご入居者さんに手をあげたり
嫌いなスタッフさんの悪口はいいまくり
睨み付けて暴言を吐いたり
機嫌が悪いと当り散らし
好きなように過ごして来られた。
ご退去の相談をしたこともあるほど
大変な時期もあった。

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まだまだ60代なので頑張って欲しいと思うけど
管だらけになって全身で息をされるその姿は
老人ホームでの
縦横無尽な姿と違いすぎて悲しい。
自分の部屋に薄型のいいテレビがあったのに
皆がいるラウンジでチャンネルを独占していた。
テレビっ子なのに入院してからはテレビも見れなくて
たまたま社内報用の私達スタッフ30人全員集合の、
写真を拡大してテレビのモニターに飾って眺められていた。
大変な人なので
その分スタッフさん一人ひとりの学びも大きく
存在感は一際だった。

会社の役員から
「マナー教育」や「言葉使い」と繰り返されるけど
実際の現場ではつい
お客様だと言うことを一瞬忘れてしまうほど
ご入居者さんに怒ってしまったり
そんな自分を深く反省したり
注意したり、されたりもする。
何より皆、仲が良くて、家族のようで
言葉遣いもすぐに乱れがちで雑に接しがちになる。

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この夏の終わりに私が突然
Jさんに丁寧に接することが出来れば
誰にでも優しく出来ると思うので
朝夕の申し送りの度に
「Jさんに、皆さんに優しい気持ちで接していきましょう」と
標語のように言い続けようと提案した。
皆そんなの嫌がると思ったのに
会議で私が提案すると
「えーっ」と言う声と
「いいと思う」と言う声もあり
一人の反対者もなく賛同された。
それから一ヶ月も経たない間の入院だった。

友人も知人も訪ねて来ない。
家族は一ヶ月に1回くらい来て下さるけど
玄関先でご本人に会わずに5分で帰ろうとされる。
きっとそこにはご家族なりの理由もあるんだろう。
そんなJさんにとって
私達だけが家族であったと思う。
入院されて初めて気付くいろんな事。
「大変やったけど寂しいと」皆口を揃える。
Jさんが苦手だったスタッフさん、
「もう大変、わがままが酷い」とボヤいていたスタッフさんも皆だ。
ご本人も「帰りたい、皆優しかった」と気付いたらしい。
誰もお見舞いに行かないとわかっているので
スタッフさんが交代のようによくお見舞いに行ってくれる。
入院先の病院で看護婦さんから
「好かれてるね、人気者やったんやねー」と言われて
酸素マスクをしながらもJさんはにっこり嬉しそう。
私自身もこの人から学んだことはいっぱいあった。

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今日は少し、もちなおされて
それでもとても苦しそうな中、お見舞いにうかがうと
看護婦さんが酸素マスクの間から
髭を剃ろうとしてくれていた
「代わりますよ」といい私が髭をそらせてもらう。
トイレで髭剃りを洗い泣き崩れた。
死へ向かう身体、全身を使っての悲鳴にも似た呼吸。
それでも髭はこんなにも生々しく太い。
この人の髭剃りだけでも
「壊れた」や「刃を取り替えろ」だの
「早く」「いつ電気屋いくねん」等と
何度も髭剃り一つのことでいっぱい言われたなぁ。
悲しいけど、でも皆が交代で来てくれるような
スタッフばかりの老人ホームで
過ごせるこの人はとても幸せだと思う。
息も絶え絶えだけど
一人ぼっちではないだろう。
「もう危ないかも」という私の電話で
いったい何人のスタッフさんが
用事の途中だったり、泣きながらだったり
必死で病院へ駆けつけてくれたろう。

もちろん仕事としてのお客様と職員の関係だし
家族にはなれない。
でも毎日同じ時間を過ごすことで生まれる
絆のような関係だと思いたい。

相手を思う心配でたまらない気持ちとか
衝動的にでも会いたくて、動かざるをやない
この本質的なところはきっと
みんながもともと持っているもので
どれだけ教育されても
どれだけ敬語や接客が完璧でも
勉強しても生まれない。
みんな本当にありがとう。

家族のありかた、
生きるということ
死ということ
いろんな人や人生を
受け入れることを
繰り返し繰り返し学んでいる仕事だなと感慨にふけって
ひとしきり泣いて老人ホームに戻る。

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泣いている顔で皆に会えないのにと思うが
車を停めた駐車場で
ご入居の方とスタッフさんが5人ほど動かない。
どうやら写真を撮っているみたい。
何とか皆がいなくなるのを待つが
なかなか動かないので仕方なく車を降りる。
「一緒に写真を撮りましょう」と笑顔で待っていてくれた。
おかげで私も何とか笑顔に切り替えホームに戻れた。

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中庭のネギが大きくなってきた。
これを早く、お腹一杯食べたいと
ワクワクしながら語る楽しい時間が過ぎる。
例えどこかが、痛くても苦しくても
「寂しい」と感じないで皆さんが過ごせますように。
どんな時でもこのホームは、笑顔がいっぱい溢れていますように。

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*この文章と写真は無関係です。10月下旬にななちゃんと宝ヶ池に出掛けた際のものです。

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Posted by 諭吉セブン
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